日本では昔から親しまれている鍼灸治療ですが、いまやWHO(世界保健機関)から様々な症状に効果があると認められています。
今回は鍼灸師のなかでも、はり師に着目して解説します。
はり師に興味がある方はぜひ最後までご覧ください。
Contents
はり師とは?
はり師は、患者の症状に合わせて最適なツボにはりを刺し、ツボを刺激することで症状を改善します。
はり治療は、東洋医学を土台としています。
東洋医学では、気の滞りが病気の原因と考えるので、はりで刺激し、気の流れをスムーズにすることで不調を改善します。
薬や手術に頼ることなく、現代人の弱った体を自然なアプローチで健康へと導きます。
はりの3つの治療方法
はりの治療方法は3通りあります。
- 金属や合成樹脂製の筒を使う「かんしんほう」
- 筒を使わずに直接刺す「ねんしんほう」
- はりの先端を特殊なこづちで数回叩いて刺す「だしんほう」
使用しているはりは、ステンレス製か銀製が一般的です。
髪の毛ほどの細さなので、熟練したはり師であれば痛みはほとんどありません。
はり治療の効果
はり治療は、下記の症状に効果があると指摘されています。
肩こり、腰痛、頭痛、胃の不調、風邪、疲労、冷え性、下痢や便秘、生理痛、精神的疾患など
最近では美容目的ではりを取り入れるところも増えています。
はり師国家試験とは?
2022年現在のはり師の国家試験の概要は、以下のとおりです。
日程:2月下旬
国家試験受験料:14,400円(税込)
会場:北海道・宮城・東京・新潟・愛知・大阪・広島・香川・福岡・鹿児島及び沖縄(※障害者は各都道府県で受験可能)
受験条件:指定の養成学校を修了した人
合格点:170点満点中102点以上で合格(正解率60%)
合格した際は、受験料とは別に申請手数料5,200円+登録免許税9,000円がかかります。
はり師の国家試験には、実務経験が必要なく、年齢制限もありません。
指定の学校に通って必要な知識と技能を習得すれば、誰でも受験することができます。
鍼灸師を目指す方は
鍼灸師を目指す方は、はり師だけではなく、きゅう師の国家試験も受ける必要があります。
はり師ときゅう師の国家試験を同時に受験すれば、一方の共通科目が免除されます。
はり師国家試験の難易度
はり師国家試験の合格率は下記のとおりです。
受験者 | 合格者 | 合格率 | |
2021年 | 3,853人 | 2,698人 | 70.0% |
2020年 | 4,431人 | 3,263人 | 73.6% |
2019年 | 4,861人 | 3,712人 | 76.4% |
合格率は70%前後と比較的高いです。
また、合格者に上限はなく、合格ラインを超えている人は全員合格となるので、そこまで難易度は高くないと言えます。
はり師国家試験は通信講座でも学べる?
はり師は、通信講座で勉強することはできません。
厚生労働省や文部科学省が指定した養成学校に通う必要があります。
はり師の養成学校とは?
はり師の養成学校は、専門学校と大学を選ぶことができます。
比較した表は、下記のとおりです。
専門学校 | 大学 | |
期間 | 3年 | 4年 |
科目 | はり・きゅうのみ | はり・きゅう以外も学べる |
学費 | 390~550万円 | 510~650万円 |
はり師の養成学校は、専門学校と大学を合わせて約100校あります。
それぞれ詳しく説明します。
専門学校
専門学校の養成課程は3年です。
大学は4年生なので、最も最短ではり師の資格を取得することができます。
専門学校では、はり師ときゅう師の両方の科目を同時に学べる学校がほとんどです。
はり師ときゅう師の専門的な知識をピンポイントで学ぶことができます。
学費は1年間で120〜150万円程ですが、初年度は入学費が含まれるので、150〜200万円です。
合計すると、3年間で390〜550万円が必要となります。
専門学校のメリットとデメリットは以下の通りです。
- 期間が短いので最短で取得できる
- 学費が安く済む
- 専門的・実践的な知識が得られる
- はり師・きゅう師以外は学べない
- はり師・きゅう師の道に進まなければ無駄になる
大学
大学の養成課程は4年です。
専門学校同様、はり師ときゅう師の両方の科目を学ぶことができますが、大学では他の科目も学ぶことができます。
学費は専門学校とほとんど変わりませんが、1年長くなるので、その分の金額がプラスされます。
入学費も含めて510〜650万円ほどかかります。
大学では時間と費用がかかりますが、学べる学問が幅広く、はり師やきゅう師以外の分野も学ぶことができます。
また、大学を卒業すると学士が取得でき、一般企業にも就職できるので、選択肢が増えます。
大学のメリットとデメリットは以下の通りです。
- 学資が得られる
- はり師・きゅう師以外の知識が得られる
- 一般企業に就職することもできる
- 専門学校に比べると通学期間が長い
- 専門学校に比べると学費が高い
- 専門学に比べると即戦力となる知識が得にくい
はり師の夜間学校のメリットとは?
はり師の専門学校の中には、夜間部の学校もあります。
はり師の養成学校の必要期間は統一で3年間です。
夜間学校でも3年間は通学する必要があります。
昼間部と夜間部ではカリキュラムに違いはないので、夜間学校でもはり師として必要な専門知識や技術が得られます。
夜間学校のメリットは以下の通りです。
- 働きながら通うことができる
- 夜間学校の方が学費が安い場合がある
- 色んなバックグラウンドを持った人と一緒に学べる
- ダブルスクールができる
- 倍率が少ないため入学がしやすい
1つずつ説明していきます。
働きながら通うことができる
夜間学校の授業は、18時~21時が一般的です。
正社員として働く人は学校に通いながら仕事を続けることは難しいですが、夜間学校なら実現します。
仕事を辞めることなくはり師の勉強をすることができます。
学生の場合も昼間はフルタイムで働き、生活費や学費を稼ぎながら学校に通えます。
アルバイトの求人募集をしている学校もあるので、サポートのある学校を選ぶのもひとつです。
夜間学校の方が学費が安い場合がある
経済面が心配な場合は、同じ学校でも夜間部の方が学費が安い場合があります。
昼間部 | 夜間部 | |
お茶の水はりきゅう専門学校 | 400万円 | 360万円 |
中央医療学園専門学校 | 367万円 | 285.3万円 |
お茶の水はりきゅう専門学校では、40万円も差があります。
学費を少しでも安く抑えたい方にとっても夜間学校はメリットになります。
色んなバックグラウンドを持った人と一緒に学べる
夜間部の学校は、圧倒的に社会人を経験している学生が多いです。
年齢も様々で、18歳〜60代と幅広いです。
以下のグラフは、昼間部と夜間部の学生データを比較したものです。
引用:日本医学柔整鍼灸専門学校
比較すると、夜間部では年齢は10代がグッと減り、社会人の割合がグッと増えます。
ダブルスクールができる
はり師の学校だけでなく、同時に他の学校に通うことができるのも夜間学校のメリットです。
倍率が少ないため入学がしやすい
昼間部に比べると夜間部の方が受験する人が少なく、倍率が低くなります。
倍率が低いと、学校側は来てくれた方がありがたいので、比較的入学がスムーズになります。
はり師の勤務先
はり師の主な勤務先は以下の通りです。
- 鍼灸院
- 接骨院
- 病院
- 福祉施設
医療施設が主な勤務先となります。
以下の表は、鍼灸師の就職先の一覧です。
医療施設だけでなく、幅広いフィールドで活躍ができます。
また、医療施設であっても、独立開業やリハビリテーション、婦人科など様々な働き方があります。
はり師の国家資格だけでも仕事はできる?
以下グラフは、平成28年10月に実施されたアンケートです。
はり師ときゅう師、あん摩マッサージ指圧師の免許取得の割合を表しています。
引用:第5回あん摩マッサージ指圧師・はり師及びきゅう師免許取得者の進路状況アンケート調査報告書
はり師の年収
はり師の年収は、働く場所とキャリアによって異なります。
- 鍼灸院や接骨院などで雇われて働く場合 年収:350〜450万円
- 開業院として働く場合 年収:400〜600万円
詳しく説明をしていきます。
雇われて働く場合
鍼灸院や接骨院などの雇われで働く場合は、初めの数年間は修行期間となります。
修行期間は、月給は13〜18万円です。
給料制か歩合制かでも年収は変わります。
歩合制の場合は、治療した数で給料が決まるため、修行期間中はタダ働きの場合もあります。
開業院の場合
開業院の場合は、腕だけではなく、マーケティングの知識や経営の知識が必要です。
マーケティングの知識は、主に価格設定です。
収入は売上によって大きく左右されますが、高い価格設定にすると、いくら腕が良くてもお客様は違う所に流れてしまいます。
お客様が通いやすい価格設定にすることが大切です。
経営の知識は、運営を続けていくために必要です。
収入の中から光熱費や家賃、人件費などを管理します。
はり師の年齢層
はり師として働く方の年齢層はとても幅広く、20代〜60代以上です。
- 資格取得に年齢制限がない
- 高齢者でも体力的に働きやすい
といった理由から、年齢を問わず働くことができます。
まとめ
はり師は、指定の学校に3〜4年通えば誰でも国家試験を受けることができ、受かると開業することもできます。
年齢制限がなく、体力的に高齢者も働きやすいので、何歳になっても挑戦できる資格と言えます。
ただ、はり師になるまでに時間とお金がかかる点と、はり師になってから年収があまり高くない点が気になります。
美容やスポーツといった幅広い活躍が期待されるはり師の年収が、これからもっと上がると良いですね。