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初生雛鑑別師って国家資格?養成所の学費や年齢制限・将来性は?

私
最近、あるYoutubeを見て、初生雛鑑別師に凄く興味持ちました。

4月から高校3年になるので、進学を大学、専門学校に行くか、仕事をするか悩んでので、これやってみたいです。

海外で日本人が活躍しているって言ってました。

資格に詳しい先生
資格に詳しい先生
面白いものを見つけましたね。確かに初生雛鑑別師は海外で多くの日本人が活躍したり、働いていますね。
私
仕事で海外に行けるなんて面白い、どうやったらなれますか?教えてください。
資格に詳しい先生
資格に詳しい先生
なかなか難しい仕事ですが、自分がそうやって興味を持ったものをやるのが一番です。僕もできるだけわかりやすく教えますね。

リモート授業が多いここ2年ほど、家で様々なyoutubeを見ていたという生徒が多いです。

進学や就職を念頭に資格を取得するために、勉強するか悩んでいる生徒がとても多いため、よく生徒から相談を受けます。

そんな大事な生徒のために、できるだけ丁寧に教えていきますので、皆さんも一緒に学んでみてくださいね。

初生雛鑑別師とはどんな資格?、国家資格なの?

”初生雛鑑別師” 名前だけでも何だか難しそうな名前ですね。
しょせいびなかんべつしと、呼びます。

下記のような資格になります。

  • 孵化(ふか)したばかりの、ひよこのオスとメスを瞬時に判別する能力を持つ専門家、技術職。
  • 鶏、七面鳥、ウズラ、アヒル、様々な鳥の雛
  • 公益社団法人畜産技術協会が運営管理する、日本独自の民間資格
  • 農林水産省の広報によると、2016年時点での有資格者は全国で183名(国内登録者は117名)となっています
  • 養鶏産業にとって、不可欠な専門家
  • スピードと精度を要求される仕事
  • 資格取得には、養成所に入所し鑑別師になるために、技術と知識を磨く講習を受ける必要がある
  • 海外でも多くの日本人鑑別師が働いている

初生雛鑑別師が何故必要か?

私
そもそも何故、生まれたひよこを、そんな専門家がオスとメスに分別しなければならないんですか?
資格に詳しい先生
資格に詳しい先生
ひよこは、ある程度育てば、外形や鳴き声などから、誰でもオス、メスの区別がわかるようになりますよね。
私
まぁ、確かにそうですね。
資格に詳しい先生
資格に詳しい先生
あなたが養鶏場のオーナーだとします。そうやって誰もがわかるようになるまで待っていては、その間のエサ代や施設代が大変ムダになってしまします。

養鶏場では、食肉用のオスとメスでは育て方が違います。産卵用はメスだけが必要なので、早い段階での分別が必要になります。

私
そうですね、生まれてすぐに判別できれば、養鶏場の経営コストは抑えられますね。
資格に詳しい先生
資格に詳しい先生
しかしながら、産まれたばかりのヒナのオスとメスの区別は誰にでもできるものではないため、鑑別する専門家として、プロの初生雛鑑別師が産まれたのです。

どうやって鑑別するんですか?

産まれたばかりのヒナは、見た目だけでは鑑別できません。
肛門の裏側にある1mmほどの生殖突起を触って鑑別します。

  • 突起がある⇨ オス
  • 突起がない⇨メス

このほんの小さな違いを瞬時に見極めなければなりません。
1匹あたり数秒、1時間に1000匹以上を鑑別します。

初生雛鑑別師の仕事内容、参考動画
がんばる!畜産!2 畜産をささえる職人たち 初生雛鑑別師 30分

初生雛鑑別師になるには養成所へ入所が必要

養成所へ入るための入所資格や、学費について説明していきます。

この養成所は、現在日本では、茨城県に一か所のみとなっています。
寮などはなく、養成所が近隣のアパートなど賃貸を紹介してくれるようです。

試験を受験して養成所に入所します

養成所の入学者数は例年10~15人となっています。

養成所に入所するための入所資格

  • 満25歳以下であること
    ⇨これは指の感覚が重要な仕事内容のために年齢制限が設定されている。
  • 身体が健康で、視力1.0以上(矯正可)であること
    ⇨とても細かい繊細な仕事のため、手先が器用であることや、視力が一定以上である事は必須条件です。
  • 高校卒業以上又は、同等以上の学歴があること

入所試験の難易度は高くありません。高校卒業者であれば解答できるぐらいのレベルとなっています。
試験においては、本人のやる気が最重要視されており、面接試験がキーポイントです。

受験手続きについて

  1. 受験願書
  2. 履歴書
  3. 戸籍抄本
  4. 健康診断
  5. 写真(3cm✖️4cm)
  6. 最終出身校卒業証明書(又は卒業見込書)
  7. 成績証明書

上記の①〜⑦をそえて、畜産技術協会、初生雛鑑別部に、12月中旬頃までに提出してください。(詳細な期日は畜産技術協会へ確認してください。)

畜産技術協会

所在地:〒113-0034 東京都文京区湯島3丁目20-9 細羊会館内
お問合せ:03-3836-2301(初生雛鑑別部)

 

試験期日
毎年2月上旬に実施(正確な期日は、直接本人に通知します。)

試験科目

  • 学科考査⇨一般的な常識や教養知識、作文力
  • 面接考査⇨なぜ、初生雛鑑別師を目指したいのか、自分の思いを十分に伝えられるように練習しておいてください。
  • 書類審査

合格通知を受けたら、すぐに手続きをしてください。
(合格通知時に、手続き関係書類を送付します。)

学費および受験料
入所試験:10,000円
初等科受験料:1,130,000円
予備考査:66,000円
高等鑑別師考査:75,000円
海外斡旋鑑別師考査:不明、海外からの必要に応じて行われる。

合計130万円近く必要となります。

養成所(茨城県在)に通う間の、アパート代生活費などを考えると、併せて200〜300万円は必要となります。

 

 

養成所に入所してからの学び

養成所に入所した後は、下記の流れになります。

入所して研修の受講⇨研修期間⇨予備考査⇨合格すると、高等鑑別師一種の試験⇨合格して鑑別師資格認定

この流れを更に、わかりやすく説明します。

技術と知識を磨くための授業(2ヶ月〜5ヶ月間)

初等科:4〜5月開校:5ヶ月間
ひなのオスメス鑑別についての理論と技術および、養鶏全般についての知識の習得

特別研修科:別に定める日に開校:2ヶ月間。
初等科修了者以外の人を対象とした特別講習で、月曜〜金曜まで週5日間、9〜17時まで受講。

予備考査

初生雛鑑別師(高等鑑別師1種)を取得する一歩手前に行われる試験
用意されたひよこを時間内に判別しなければならない。
鑑別の正解率で合否が決定される。

試験内容:卵用種300種
試験時間:30分だが、12分以内に100羽の識別をこなす。
注)100羽ずつに分けられた、ひよこの鑑別率は95%、全体で96%以上の正確さを求める。
合格率:約39%、合格率はかなり低めとなっています。

高等鑑別師考査

初生雛鑑別師(高等鑑別師一種)になる為の、最終試験
合格者は、公益社団法人畜産技術協会の高等鑑別師として正式に登録されます。

試験の時期: 4月と、10月 年に2回実施、合格者には郵送で通知される。

試験内容:卵用種及び肉用種の鑑別(100羽ずつに分けられて、合計400羽
内訳:卵用種が300羽(正解率:98%以上)、肉用種が100羽(正解率:97%以上)
さらに10分以内に100羽以上の鑑別

試験時間:所要時間36分以内に、400羽全ての鑑別、鑑別率平均99%以上

合格率:約60%

 

入所した人数の半数程の人が、高等鑑別師一種に合格すると言われていますので、卒業して鑑別師となるには、難しい専門職だと言えます。

入所して受講→研修期間→予備考査→高等鑑別師一種への合格、という流れから鑑定士になるまでに、2〜3年を要する人は多いようです。

鑑別師となってからの収入や、就職先

日本独自に発達した技術であるために、世界の中でも日本人の初生雛鑑別師の能力はとても高く評価されており、日本人の鑑定技術が世界一です。

ここで、養成所を卒業してからの仕事の在り方、研鑽や、平均給与などについてご説明します。

初生雛鑑別師に関する正確な平均初任給は発表はされていません。
初生雛鑑別師の基本的な収入は、鑑別したひよこの数✖️数✖️単価 と計算されます。

ひよこの品種にもよるようですが、扱うひよこ1羽につき最低4円が相場となっており、初任給はおよそ20万円程度と言われています。

ベテランになると、400~600万円という収入にもなるようです。
ただ日本国内では、初生雛鑑別師は充足している事や、初生雛鑑別師を雇用できるような、大きな養鶏場がとても少ないため、技術が未熟な若いうちは、海外で働きながら技術を磨いていく人が多いです。

畜産技術協会によると、アメリカやヨーロッパなど世界14カ国に、鑑別師約70名協会から派遣されて仕事をしています。
最近では、韓国に鑑別の技術が渡ったこともあり、韓国人鑑別師も増えているようです。

日本では、公益社団法人畜産技術協会にて、毎年、年に1回【全日本初生雛鑑別選手権大会】を開催し、全国各地から鑑定士を集め、技術を競い合うなど、鑑別技術の向上に取り組んでいます。

大会の様子
http://gotisousagasi.com/16917.html

様々に研究されている鑑別方法

動物愛護の高まりにより、孵化前の鑑別技術がとても研究されています。
何故ならば、分別されたらオスの雛は不要となってしまいますので、殺処分されてしまいます。

その殺処分を禁止する声が高まっているからです。
卵のままなら殺さずに売れるという事もあります。
食べるために育てていても、生まれた命を殺して餌にしてしまうというのは、変えたい仕組みですよね。

下記のような孵化前鑑別が開発されています。

赤外線レーザーを使用した鑑別

産卵後4日の段階で赤外線レーザー光を鶏卵に照射、血液の蛍光の強度の違いで識別することができます。

  • 卵から採取した液体による鑑別も一部では行われています。
  • 開発改良されている最新の養鶏種では、様々な掛け合わせにより、雛の羽毛の色でオスメスの見分けがつく品種も出回ってきているようです。

更に、動物福祉の意識が強まっている諸外国では、オス処分方法について様々な取り組みがあります。

  • ドイツでは、2022年に殺処分禁止法が法制化されました。
  • フランスでも同様の動きが進んでいます。

初生雛鑑別師の仕事はどうなるの?

これらの鑑別方法が実業化していけば、初生雛鑑別師の資格はどうなるのでしょうか。
日本よりも諸外国は、国、企業レベルでアニマルウェルフェアの目標がとても高いため、目覚ましい動きがあります。

孵化前の鑑別方法も研究される一方で、オス処分の代替方法もとても研究されています。
例えば、卵肉兼用種の研究も盛んに行われています。
これは動物福祉の観点でも、初生雛鑑別師にとっても多くのメリットがあります。

  • オスの殺処分をしなくて済む。
  • 卵肉兼用種そのものが動物福祉にとても配慮されている。
  • メスの年間産卵数は従来の鶏と比べて50個減少している。
  • 肉用として飼育されたオスは、従来の鶏と比べて成長が2倍遅かったという結果が報告されています。

生産効率ということだけを追求するならマイナスになるかもしれませんが、採卵鶏の卵の産卵数の多さ、肉用鶏の急激な成長は鶏に大きな苦痛をもたらします。

畜産への過剰なホルモン剤の使用禁止や、動物福祉という点でも、卵肉兼用種の研究はとても熱望されています。

現在、このオスの殺処分を伴わないと販売されている卵は、卵内判別鑑定が9日目あるいは、13日目に行われているため、オスの苦痛を回避できるわけではないからです。

アニマルウェルフェア(Animal Welfare)とは
感受性を持つ生き物としての家畜に心を寄り添わせ、誕生から死を迎えるまでの間、ストレスをできる限り少なく、行動要求が満たされた、健康的な生活ができる飼育方法を目指す畜産の在り方。5つの事由が定められている。

  • 空腹と渇きからの自由
  • 不快からの自由
  • 痛みや傷、病気からの自由
  • 正常な行動を発現する自由
  • 恐怖や苦悩からの自由

家畜を快適な環境下で飼養することで、家畜のストレスや疾病を減らすことが重要であり、生産性の向上や安全な畜産物の生産にも繋がるとされています。

現在行われている主な鑑別法と、日本で開発された鑑別法

現在、3つ種類ほどの鑑別方法が用いられています。

肛門鑑別法
鑑別法:初生雛鑑別師が雛の肛門を開き、オスとメスの生殖突起を確認して鑑定する。
特徴:世界中に普及している。正確で迅速だが鑑別に高度な技術が必要。

羽毛鑑別法
鑑別法:羽毛の伸びる速度や、羽色の違いで鑑別する
特徴:誰でもできるが、品種改良されたニワトリに限る。(羽色に特徴がないとできない)

機械鑑別法
鑑別法_ガラスレンズ管を直腸内に挿入して直接精巣や卵巣を目で見て鑑別する。
特徴:簡単な訓練で精度の高い鑑別が可能だが速度が劣る。
スピードが遅いために衰退してしまい、一部の限られた養鶏施設のみ利用されている。

内視鏡鑑別法という新たな開発

2016年に、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は、内視鏡鑑別法を開発しました。

鑑別法:ガラスレンズ管を直腸内に挿入して鑑別。内視鏡で精巣や卵巣の形態をパソコンのディスプレイに拡大して映す。

特徴:簡単な訓練で鑑別できる、内視鏡で拡大して形態観察ができるため、精度と速度向上が期待できる。鶏の種類を問わず使え、100羽を6〜7分程度でほぼ100%の鑑別が可能となる。
3日間程度の操作経験を得て、鑑別可能となる。
現在はまだ試作段階なため、民間レベルで実用化されるのは、1〜2年先なようです。

引用:農林水産省、MAFF TOPICS あふラボよりhttps://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1612/mf_topics01.html

初生雛鑑定師の将来性

様々な鑑別方法が研究されている分野ではありますが、そのコストなどを考えると、日本を含め、どの国でもすぐにでも取り入れるというのは、中々簡単なことではないようです。

今までのように、安いコストで大量に、という畜産から、動物にもストレスを感じない飼育方法によって、安全かつ健康な畜産ということが求められています。

特に健康志向という事もあり、鶏卵の国内消費は安定して高まっています。

日本養鶏協会によれば、国民1万人当たりの消費量は年間338個で、年間372個のメキシコに次いで世界第2位になっています。
また、生産量については、2030年には約271万トンになると見込まれています。

安定した国内需要を背景に鶏卵生産量は増加傾向にあります。

初生雛鑑別師を目指す方は、海外で研鑽を積む事も念頭にしていく、メンタル的な強さと、柔軟性が必要となってきます。

まとめ

ひと昔、初生雛鑑別師は、半年で家が一軒建つというくらい、収入が良い時代もあったようです。

それが鑑別師の増加や、そもそも孵化場の都合に合わせて仕事がくるという流れのため、自分から仕事をドンドン増やしていくという事が中々、難しいのが現状のようです。

ただ、ひよこは様々な品種がいて、1羽100円のもいれば、ブランド鶏だと、1羽数万円するのもあるようです。

いずれも時間と、ノルマ(鑑別数)と、クオリティ(正確な鑑別)がしっかりしていれば、需要はしっかりとあると言われています。

ぜひ、多言語を習得しながら、初生雛鑑別師として卓越した技術を習得し、幅広い養鶏に関わってみてはいかがでしょうか。

今回は、下記について書いてみました。

  • 初生雛鑑別師とはどんな資格?国家資格なの?
  • 初生雛鑑別師になるには養成所へ入所が必要
  • 鑑別師となってからの収入や、就職先
  • 現在行われている主な鑑別法と、日本で開発された鑑別法
  • 初生雛鑑別師の将来性
  • まとめ

あなたの未来が初生雛鑑別師という事をキッカケに、養鶏を通して世界で活躍できれば嬉しいです。🐥🐣🐥