全世界で船を使った運搬が盛んに行われているため、海上無線通信士は国内でも国外でも必要な存在です。
これからの国際社会において需要がある資格と言えるでしょう。
今回はそんな海上無線通信士について解説します。
- 海上無線通信士はどんな仕事をしているの?
- どんな勉強が必要?
- 英語と電気通信術ってどんな試験なの?
- 難易度は?
といったことがわかります。
海上無線通信士について詳しく知りたい方は是非最後までご覧ください。
Contents
海上無線通信士は無線従事者の一種?
テレビ・ラジオ・携帯・無線LAN(Wi-Fiなど)・位置情報(GPS)・気象情報・電子レンジ・ETCなど
無線従事者の資格の種類
無線従事者の資格は、たくさんあってわかりにくい!という声をよく聞きます。
海上無線通信士は無線従事者の1種とお伝えしましたが、無線従事者は、総合・海上・航空・陸上・アマチュアの5つの分野に分かれています。
細かく分類すると全部で23種類あり、それぞれの操作範囲と相互関係は以下の図のとおりです。
- 一海通=第一級海上無線通信士
- 二海通=第二級海上無線通信士
- 三海通=第三級海上無線通信士
- 四海通=第四級海上無線通信士
海上無線通信士の仕事とは?
海上無線通信士は、無線局から無線設備操作を行います。
船が危険に遭遇せず、スムーズに運航できるようにサポートすることが主な仕事となります。
海岸局、船舶局などの無線局・船舶関係会社・無線機メーカーなど
第一級〜第四級によって出来ることが違う?
資格区分は第一級〜第四級に分かれており、それにより出来ることが変わります。
第一級〜第四級の操作範囲は以下の通りです。
第一級〜第三級 |
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第四級 |
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- 海岸局や海岸地球局、船舶局、小規模漁船用海岸局とは:無線局の種類
- GMDSSとは:船舶が遭難した際に、発信した警報が陸上の救助機関や付近の船舶に受信され、効果的な救助活動が行えるシステム。『海上における遭難及び安全に関する世界的な制度』
- モールス電信とは:モールス信号は、短い音や長い音を組み合わせて表す文字のことで、音や光を使って相手にメッセージを送ります。モールス電信は、サミュエルモールスという人が作った機械のことです。
第一級は大規模な海岸局の無線を扱えるのに対し、第四級になるにつれ扱える無線局の規模が小さくなります。
また、大きな違いとして第一級〜第三級は国外通信ができますが、第四級は国内通信のみです。
海上無線通信士になるために必要な勉強は?
海上無線通信士の資格の出題範囲は、資格区分によって変わります。
第一級〜第四級の出題範囲は以下の通りです。
第一級〜第三級 |
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第四級 |
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第一級〜第三級では③英語と④電気通信術の勉強が必要ですが、第四級では必要ありません。
どの資格区分を受けるにせよ、海上無線通信士の資格を得るためには、①無線工学と②法規は必須となります。
電波法とは:そもそも電波は、携帯電話やテレビ、無線LAN、警察や消防など様々な場面で使われています。電波法は、電波の混信を防ぎ、安心安全に、公平かつ機能的に使用できるように定められています。
無線工学と法規は過去問を丸暗記する!
無線工学と法規は、過去問からそのまま出題されるケースがほとんどで、過去問を丸暗記することが合格への近道です。
認定機関である日本無線協会のHPに、2回分の過去問が掲載されています。
解説がついた過去問テキストのオススメは以下の通りです。
「四海通 無線従事者国家試験問題解答集 平成29年2月期〜令和3年8月期」
引用:Amazon
「海上無線通信士 第一級・二級・三級 無線従事者国家試験問題解答集(令和元年9月期〜令和3年9月期)」
引用:Amazon
「第三級海上無線通信士 法規」
英語と電気通信術に関しては、これから詳しく説明します。
海上無線通信士の英語とは?
先ほども説明した通り、第一級〜第三級の試験を受けるためには英語を勉強する必要があります。
海上無線通信士で出題される英語は特殊で、TOEICや英会話ではカバーしきれません。
無線技術・航海・無線法規などに関するマニアックな英単語を含む英文が出題されます。
英語の勉強のポイントは3つ!
海上無線通信士の英語の勉強方法は以下の通りです。
- 専門用語となる英単語をピックアップして読解力を高める
- リスニング力を習得するために、CD付きの参考書を買う
- 過去門で傾向をつかむ
オススメのテキストは、「無線通信士(等)英会話CD(2枚組)」です。
海上無線通信士の英語は、第一級〜第三級で共通の問題が出ます。
そのためテキストは資格区分によって変える必要はありません。
海上無線通信士の電気通信術とは?
電気通信術は、通信能力の技量を証明する為の実技試験です。
- モールス電信
- 電話
- 直接印刷電信
電気通信術の実技試験には上記3種類がありますが、海上無線通信士の試験ではモールス電信は出ないので、電話と直接印刷電信が出題されます。
それぞれ詳しく説明します。
電気通信術【電話】
電話は、「送信」と「受信」の2つの試験があり、フォネティックコードを使います。
NATOフォネティックアルファベットの一例が以下の通りです。
- A=Alpha(アルファ)
- B=Bravo(ブラヴォー)
- C=Charlie(チャーリー)
- D=Delta(デルタ)
送信では、問題用紙に書かれてある内容を読み上げます。
- 「始めます」の語
- 「本文」の語
- 本文
- 「おわり」の語
という順番で行います。
試験時間は2分で100文字読み上げます。
受信は、英語のリスニングテストのように音声が流れ、その内容を回答用紙に書いていきます。
内容は、フォネティックアルファベットがランダムに読み上げられるので、それをアルファベットで記入します。
試験は2分間で、100文字のアルファベットが埋まるようになっています。
「送信」「受信」ともに持ち点が100点あり、減点方式で採点され、80点以上で合格です。
誤字や脱字によって減点されていくので、正確さが求められます。
電気通信術【直接印刷電信】
直接印刷電信は、電文が書かれた問題用紙を見ながらパソコンのキーボードを打ち込むという試験です。
試験は、5分経過するか、250文字全てを入力することができたら終了となります。
200文字以上送信することができたら合格です。
海上無線通信士の試験概要
それでは、海上無線通信士の試験について詳しく説明します。
海上無線通信士は、公益財団法人日本無線協会が認定する国家資格で、試験区分は第一級〜第四級に分かれています。
2023年現在の試験概要は以下の通りです。
主催団体 | 公益財団法人 日本無線協会 |
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試験会場 | 東京・札幌市・仙台市・※長野市・※金沢市・名古屋・大阪市・広島市・松山市・熊本市・那覇市
※第三級と第四級のみ |
試験日 |
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受験資格 | 特になし |
受験料 |
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試験時間 |
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出題形式 | 多肢選択制(電気通信術のみ実技試験) |
試験内容と試験時間
海上無線通信士の詳しい試験内容と、試験時間を記載した表が、以下の通りです。
第一級・第二級 | 【学科試験】
【実技試験】
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第三級 | 【学科試験】
【実技試験】
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第四級 | 【学科試験】
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合格基準
海上無線通信士試験の第一級〜第四級のそれぞれの配点と合格点は、以下の通りです。
【学科試験】
第一級・第二級 |
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第三級 |
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第四級 |
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【実技試験】
第一級〜第三級 |
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電話の減点方式は、以下の表のとおりです。
試験の合格発表は、試験から約1ヶ月後に日本無線協会のHPに掲載されます。
その後10日以内に自宅に合格ハガキが届くようになっています。
免除もある?
以前合格した試験科目や、認定学校の卒業生などには、一部科目が免除されます。
試験科目の一部免除には、6種類あります。
- 指定の無線従事者資格の科目合格者に対する該当科目の免除
- 電気通信術の科目合格者に対する免除
- 認定学校等の卒業者に対する試験の一部免除
- 一定の無線従事者の資格を有するものに対する試験の一部免除
- 一定の無線従事者の資格と業務経歴を有するものに対する試験の一部免除
- 電気通信事業法による資格を有するものに対する試験の一部免除
詳しくは公益財団法人 日本無線協会のHPをご覧ください。
海上無線通信士の難易度とは
海上無線通信士の合格率は、主催団体である日本無線協会のHPに記載はありませんでしたが、他のHPにいくつか書いてありました。
それによると、第一級〜第四級のそれぞれの合格率は以下の通りです。
【第一級】
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2021年 | 46人 | 24人 | 52.2% |
2020年 | 41人 | 17人 | 41.5% |
2019年 | 47人 | 14人 | 29.8% |
【第二級】
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2021年 | 33人 | 3人 | 9.1% |
2020年 | 49人 | 7人 | 14.3% |
2019年 | 32人 | 6人 | 18.8% |
【第三級】
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2021年 | 878人 | 271人 | 30.9% |
2020年 | 872人 | 359人 | 41.2% |
2019年 | 956人 | 293人 | 30.6% |
【第四級】
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
2021年 | 349人 | 192人 | 55.0% |
2020年 | 335人 | 203人 | 60.6% |
2019年 | 370人 | 224人 | 60.5% |
- 第一級:30〜50%
- 第二級:10〜20%
- 第三級:30〜40%
- 第四級:55〜60%
まとめ
今回は海上無線通信士について解説しました。
この記事をまとめると、以下の通りです。
- 海上無線通信士は、海と陸を無線で繋ぎ、安全に運航できるようサポートする仕事であること
- 勉強は「無線工学」と「法規」は必須で、第三級以上を目指すには「英語」と「電気通信術」が必要であること
- 英語は無線技術や航海などマニアックな単語を覚える必要があり、リスニングテストもあること
- 電気通信術は実技試験で、「電話」と「直接印刷電信」があること
- 試験の難易度は第四級が55%〜60%と易しく、第三級以上は10%〜50%と難しくなること
海上無線通信士は国家資格であるものの、受験資格がなく誰でも受験することができ、一部科目が免除される場合があります。
無線従事者に興味がある方は、是非海上無線通信士の取得も目指してみてください。