テレビで手話付きのニュースや番組を見たことがある人は多いと思います。
私たちにとって手話は遠いものですが、聴覚障害者にとっては、ないと困るツールです。
手話の中でも、手話通訳士という資格があります。
手話通訳士は、聴覚障害者にとって、なくてはならない存在です。
このページでは、そんな手話通訳士の資格について詳しく紹介します。
- 手話通訳士の仕事内容
- 手話通訳士は国家資格?
- 手話通訳士の難易度・合格率
- 手話通訳士は独学で取得できる?
- 手話通訳士の年齢層
このようなことが分かります。
手話通訳士の資格について興味がある方はぜひ最後までお読みください。
Contents
ただ手話で通訳するだけではない
聴覚障害者と、聴覚障害者でない方では、生活スタイルや考え方が異なる部分があります。
そういった世界観や物事の見方を理解し、意味を理解したうえで通訳をする必要があります。
手話の技術だけではなく、聴覚障害者の基本的な知識が必要になってきます。
また、例えば「適当」という言葉は、
- 「ちょうどいい・適切」
- 「いい加減なこと」
という2つの異なる意味があります。
さらに、「やめてよ」という言葉は、表情によって、冗談か?本気か?を汲み取ることができます。
この様に、微妙なニュアンスや言葉遣いは、その場に合った適切な言葉や表情を選んで通訳する必要があります。
発言する人の気持ちを正確にくみとり、丁寧に通訳することが大切です。
手話通訳士に向いている人は?
手話通訳士は、人と接することが苦手な方や、人の気持ちを汲み取るのが苦手な方は向いていないでしょう。
- コミュニケーション能力があり、社交的な人
- ボランティア精神がある人
- 思いやりがある人
- 協調性がある人
- 勉強熱心な人
- 福祉や介護の仕事に興味がある人
手話通訳士は、こういった方に向いています。
手話通訳士の資格は国家資格なの?
手話通訳士は、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが主催する試験です。
国家資格ではなく、厚生労働省が認定した公的資格です。
そもそも資格には、大きく3種類あります。
- 国が認定した国家資格
- 文字科学省や経済産業省などの官庁や大臣が認定した公的資格
- 国家資格と公的資格に当てはまらない民間資格
手話通訳士は、②の公的資格に当てはまります。
手話通訳資格試験の概要はこちら↓
- 受験資格:20歳以上の人(学歴は問わない)
- 試験日:毎年1回10月上旬
- 試験会場:東京・大阪・熊本の3ヶ所
- 受験料:21,600円(+登録手数料8,800円)
学歴や経験は問われないので、20歳以上でしたら誰でも受験可能です。
手話通訳士の資格は必ず必要なの?
資格がないと「手話通訳士」と名乗ることができませんが、手話通訳士の業務はできます。
ただ、裁判や警察の尋問、選挙放送などの公的な活動は、手話通訳士の資格がないとできない仕事です。
手話通訳士として業務をするのであれば、資格があると公的な業務もできるようになるので、あったほうが良いでしょう。
手話通訳士の合格率・難易度
手話通訳士の合格率は以下の表のとおりです。
年 | 受験者数 | 合格率 |
2009年 | 932人 | 33.4% |
: | : | : |
2015年 | 1076人 | 2.1% |
2016年 | 1058人 | 11.2% |
2017年 | 1037人 | 8.2% |
2018年 | 1105人 | 9.8% |
2019年 | 1100人 | 11.0% |
合格率を平均すると、10%前後になります。
手話通訳士の資格の難易度は、国家資格など全ての資格を含めると「普通」と言われています。
手話通訳士は、現役の通訳士が多く受験する資格です。
にも関わらず、合格率が10%前後ということから、難しい資格だということが伝わるかと思います。
試験の中で、国語の問題が出題されます。
「国語」というのは範囲が広く、どの様な問題が出るか予想がつきづらいので、テキストで山を張るということができません。
日頃から新聞やニュースなどをチェックし、日本語や社会の動きを理解しておく必要があります。
また、合格率は年によってかなりバラツキがありますよね。
合格を目指すのであれば、運も必要かもしれません。
手話通訳士の勉強内容
難易度の高い手話通訳士の資格を取得するためには、どんな勉強が必要でしょうか。
学科試験は、主に4つの分野の勉強が必要です。
- 障害者福祉の基礎知識
- 聴覚障害者に関する基礎知識
- 手話通訳のあり方
- 国語
手話は、聴覚障害者に向けたコミュニケーションツールなので、福祉や障害者については詳しく学ぶ必要があります。
さらに、手話通訳なので、手話通訳に関する専門的な知識も必要です。
実技試験は、実際の現場で求められるレベルの手話のスキルが必要です。
なので、学科試験の知識だけではなく、手話を正しく読み取り、表現することも必要不可欠です。
手話通訳士は独学でも取得できる?
正直に言いますと、独学は難しいです!
障害者福祉の基礎知識など、学科試験の勉強はテキストである程度対策を立てることができます。
学科試験対策としておすすめのテキストはこちらです。
引用:Amazon「六訂 手話通訳技能認定試験傾向と対策 ー手話通訳士試験合格への道 単行本 – 2019/6/20」
こちらのテキストは、手話通訳士の学科試験に向けた対策本です。
試験の傾向を分析し、過去問題と模擬問題を集めているので、一冊でかなり勉強になります。
ですが、実技試験の手話は、現場で必要なレベルの力が試されます。
実技試験の手話に高度なスキルが求められるため、独学は難しいです。
試験合格までに、通常は4年程かかると言われています。長期的に学習を重ねて試験に挑むことをお勧めします。
最初に述べた通り、手話通訳士はただ手話で通訳をすれば良いというわけではありません。
なので、講習会の参加や専門的な学校で学習するなど、実際に聴覚障害者と接して実務を重ねていくことが大切です。
最近では、YouTubeで聴覚障害者協会が出す動画や、ろう者が作成している動画を見て学ぶこともできます。
ですが、通訳はコミュニケーションなので、生の手話の方が手っ取り早くレベルアップにつながります。
福祉課や社会福祉協議会で情報収集し、聴覚障害者が活動しているサークルに参加すると、生の手話を学ぶことができておすすめです。
手話通訳士の就職先は?活かせる仕事はあるの?
手話通訳士の働く場所は、聴覚障害者のサポートが必要な場所がメインです。
- 聴覚言語障害センターや市役所で職員として勤務し、必要に応じて手話通訳を行う。
- 各自治体の福祉事務所や民間施設、聴覚障害者団体などに所属し、手話通訳を行う。
- 医療機関やハローワークなどで非常勤として働く。(病院や学校の保護者会などに同行したり、講演会や会議などで通訳をする。)
- 障害者職業能力開発校などで働く。
このように、市役所や医療機関で勤務しながら、依頼があれば手話通訳士の業務をこなすという方がほとんどです。
実際に、手話通訳士のみで生計を立てている人は、日本にわずか数十人しかいません。
資格を活かすなら、裁判や警察の尋問、選挙放送などの公的な仕事を受けることです。
社会福祉法人聴力障害者情報文化センターに手話通訳士として登録しておくと、依頼を受けることができます。
手話通訳士の年齢層は?
手話通訳士は、20歳以上であれば誰でも取れる資格です。
ですが、合格者の現状は40代から50代が7割で、20代から30代は1割程度です。
まとめ
手話通訳士の資格取得は合格率が低く、独学では難しいです。
資格取得の難易度が高い割に、働く場所が少ないというのは気になります。
この記事では、
- 手話通訳士の仕事内容
- 手話通訳士は国家資格?
- 手話通訳士の難易度・合格率
- 手話通訳士は独学で取得できる?
- 手話通訳士の年齢層
ということを紹介しました。
手話通訳士は、聴覚障害者にとっては必要不可欠で、社会の役に立つ重要な資格です。
これからは聴覚障害者の社会進出が進み、手話通訳士の業務も増えるといいですね。