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国家資格【義肢装具士】難易度・合格の確率は?給与(年収)は?

義肢装具士アイキャッチ

近年、世界は多様化の時代に突入しています。多様化社会とは、それぞれの違いを認め、尊重・共存していく社会のことです。

多様化を求める動きは、スポーツの世界でも例外ではありません。近年パラスポーツの普及により、メディアでも頻繁に目にすることが多くなってきました。

Aさん
Aさん
パラスポーツといえば、2020東京パラリンピックは記憶に新しいところですよね。
Bさん
Bさん
はい、義足や義手をつけた方たちが見せてくれる、時に健常者をも超えるパフォーマンスには心から感動しました!
Aさん
Aさん
その障がい者の方たちにとってなくてはならない、足や手の代わりとなる義肢を作るのが『義肢装具士』です。
Bさん
Bさん
義肢装具士って、障がい者の方たちの縁の下の力持ちなんですね!
Aさん
Aさん
きっとこれから、義肢装具士の需要はもっと高まっていくでしょう。

 

義肢装具士は、「義肢」や「装具」と呼ばれる、体の障がいを補助する器具を製作する国家資格です。

 

今回は義肢装具士資格試験の難易度、試験の合格率、更には資格取得後、実際に義肢装具士となった場合、どのくらいの給与になるかも説明していきます。

それでは未来の義肢装具士の皆さん、いってみましょう!

 

義肢装具士とは?

義肢装具士、日本では1987年に定められた比較的新しい国家資格です。

「義肢装具法」から抜粋すると、義肢装具士は「厚生労働大臣の免許を受けて、義肢装具士の名称を用いて、医師の指示の下に、義肢及び装具の装着部位の採型並びに義肢及び装具の製作及び身体への適合を行うことを業とする者」となります。

 

分かりやすく言えば、「義肢」(義手や義足などの手足の役割を担うもの)と「装具」(サポーターや固定具などの身体をサポートするもの)を、各患者さんの条件や事情に合わせて作るのが義肢装具士です。

 

また義肢装具士は、単に義肢装具を作るだけでなく、患者さんたちの不安感や恐怖心を取り除くなど、心のケアも行っていく必要があります

ちなみに、英語表記は「Prosthetist and Orthotist」となり、POと略されます。

 

義肢装具士は国家資格であり、当然のことながら国家試験に合格しなければ、義肢装具士として働くことはできません

義肢装具士の国家試験は一体どのような試験なのか、順を追って見ていきましょう。

義肢装具士試験の概要

義肢装具士の国家試験とは、一体どういうものなのでしょうか?

厚生労働省の義肢装具士国家試験の施行より、第35回試験の概要をご紹介します。

1:試験期日

令和4年2月25日(金)

義肢装具士資格試験は年に一度です!つまり合格しなければ、次のチャンスは一年後です。しっかりと準備して試験に臨みましょう!

 

2:試験地

東京都

受験者数が限られることから、試験地は東京のみです。遠方からであれば、万が一のことも考えて、前日から宿泊していたほうがいいでしょう。

 

3:試験科目

臨床医学大要(臨床神経学、整形外科学、リハビリテーション医学、理学療法・作業療法、臨床心理学及び関係法規を含む。)

  • 義肢装具工学(図学・製図学、機構学、制御工学、システム工学及びリハビリテーション工学)
  • 義肢装具材料学(義肢装具材料力学を含む。)
  • 義肢装具生体力学
  • 義肢装具採型・採寸学
  • 義肢装具適合学

 

試験は「多肢選択式(いくつかの選択肢から、適当なものを選ぶ方式)」で、合格基準は130点満点中78点以上(60%以上)です。

 

4:受験資格

(1)学校教育法の規定により、大学に入学することができる者であり、なおかつ、指定の義肢装具士養成所において、3年以上義肢装具士として必要な知識及び技能を修得していること。

(2)大学もしくは高等専門学校、養成所において1年以上修業し、かつ、以下の科目を修めた者であり、指定の養成所において、2年以上義肢装具士として必要な知識及び技能を修得していること。

  • 心理学、倫理学、社会学、人間発達学及び社会福祉学のうち1科目
  • 数学、物理学、生物学及び数理統計学のうち2科目
  • 外国語
  • 保健体育

(3)職業能力開発促進法の規定に基づく義肢及び装具の製作に係る技能検定に合格した者であり、指定の養成所において、1年以上義肢装具士として必要な知識及び技能を修得していること。

(4)外国の義肢装具の製作適合等に関する学校もしくは養成所を卒業していること。または外国で義肢装具士の免許に相当する免許を受けた者であって、厚生労働大臣が(1)~(3)と同等以上の知識及び技能を有すると認定した者。

(5)指定の養成所で、現に義肢装具士として必要な知識及び技能の修得を終えている者。

 

指定の養成所は、大学や専門学校がほとんどですが、全国にも数えるほどしかないので、できれば全ての学校の情報を集めて、自分に合う養成所をじっくり検討してみましょう。

 

5:主催団体

公益財団法人 テクノエイド協会

 

義肢装具士試験の難易度・合格確率は?

国家試験と聞くと、かなり難しいというイメージを持つ方もいるかもしれませんし、上記の概要を見ても、何だか複雑で不安になるかもしれません。

しかし、義肢装具士に関して言えば、教育機関で専門知識を学び、過去問題の繰り返しや、集中講義の受講等でしっかりと対策をしていけば、高い確率で合格できるでしょう。

 

実際の合格率はどうなっているのでしょうか?
過去5年間の合格率は以下のようになっています。

 

<実施年>    <受験者数>    <合格者数>      <合格率>
2022年      181人         124人         68.5%
2021年      227人         165人         72.7%
2020年      208人         164人         78.8%
2019年      263人         235人         89.4%
2018年      232人         198人         85.3%

 

2022年こそ合格率が70%を切りましたが、過去の結果を見てもおよそ70%~90%までの間を推移しています。

 

先ほど高い確率で合格できる、と言いましたが、まさにこの合格率がそれを裏付けています。

ただ油断は禁物です。義肢装具士は専門性の高い国家資格であるため、受験者数も毎年200人程度と受験者が限られます。ですので、合格率の高さは目安程度に考えておいてください。

 

あまり自信がないのもよくありませんが、高い合格率に安心して、安易に考えてしまうのはもっといけません

学習した内容を、しっかりと知識として定着させ、合格を掴み取りましょう。

 

義肢装具士の給与(年収)は?

国家試験に合格し、晴れて義肢装具士としての人生がスタートします。
では義肢装具士の給与は、実際どのくらいなんでしょうか?

 

厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、義肢装具士の年収の全国平均は423.4万円。地域別でみると東京都だと440.1万円、大阪府であれば440.5万円となります。

 

専門的な知識と資格が必要とされる義肢装具士ですが、年収はそれほど高いとは言えません。義肢装具士になる方は年収うんぬんというよりも、仕事に使命感ややりがいを感じている方が多いようです。

 

とはいえ、義肢装具士は職人としての一面もあるため、年齢を重ね経験を積み、技術が上がってくれば、給与も上がってくる傾向にあります。そのため企業によっては50~60代で年収1,000万円を超える可能性は十分あります。

 

また十分な技術を身に付ければ、独立・開業という選択肢も出てきます。リスクはあるかもしれませんが、自分のスキル次第で年収を上げていくことができるでしょう。

 

まとめ

義肢装具士 資格①

 

現在、義肢装具士の資格保持者はそれほど多くない状況です。

しかし、パラリンピックなどの国際大会などで活躍する方が増えてきたのを見ても、スポーツの現場や発展途上国において、義肢装具士の需要は高まっている傾向にあります。

 

また、日々医療技術は進歩しており、義肢・装具もより多くの利便性を、患者さんに提供できるようになるでしょう。

 

事故、あるいは生まれつき体に障がいを持つ方にとって、義肢・装具は己の一部であり、明日への希望です。義肢・装具により失われた日常を取り戻す方、パラスポーツなどに自分の可能性を広げていく方もいるでしょう。

 

義肢装具士は、単に物を作る職人ではなく、携わった人の未来を創っていく重要な職業です。あなたの作った義肢・装具でたくさんの方に明るい未来を届けてあげてください。