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中国語翻訳能力検定試験5級って?難易度、合格率は?

翻訳検定 中国語アイキャッチ

欧米はもちろん、アジアを見ても、ビジネスにおけるコミュニケーションの場では依然として英語が共通言語として使われています。しかし、母語人口でみれば世界でもっとも多いのが中国語です。

中華人民共和国はもちろん、シンガポールや台湾など多くの周辺国が中国語を公用語として採用しています。中国語が今後ますます重要度を増してくることは間違いないでしょう。

 

そんな社会情勢の中、既に中国語の勉強を始めている方も多いでしょう。
中国語に関する検定・資格は世に数多くありますが、今回は「翻訳」というジャンルから、以下の2つの検定試験をご紹介します。

 

  • 中国語翻訳能力検定試験
  • JTA公認翻訳専門職資格試験

 

中国語翻訳検定の中ではよく知られる試験ですが、これら2つは共に関連があるため、同時に紹介させていただきます。

 

それでは「中国語翻訳能力検定試験」から順を追ってみていきましょう。

中国語翻訳能力検定試験とは、1~5級を判定する試験

まず初めにご紹介するのが、「中国語翻訳能力検定試験」です。

「中国語翻訳能力検定試験」は、一般社団法人日本翻訳協会(Japan Translation
Association:以下JTA)が主催し、中国語翻訳能力をグレード1級~5級)で判定する能力検定試験です。

能力を判定する試験って何?と思う方もいるでしょう。

どういうことかというと、1級や3級・5級という各級の試験があるわけではなく、皆が同じ試験(実際は3つの分野に分かれます。これは後で説明します)を受け、その結果、受験者が現在中国語翻訳者としてどのくらいの能力を持っているかを1級から5級のグレードで示してくれる試験です。

中国語翻訳能力検定試験の試験内容

まず、試験を受ける場所ですが、インターネットによる在宅試験となり、試験は次の3分野の中から一つを選択します。

 

中日ビジネス一般翻訳能力検定試験(日本語を母国語とする方を想定)
試験時間:午前10:00~11:30
試験内容:和訳 4問、中文の要約 1問

中日ビジネス一般翻訳能力検定試験(中国語を母国語とする方を想定)
試験時間:午前10:00~11:30
試験内容:中訳 4問、日文の要約 1問

中国語リーガル翻訳能力検定試験
試験時間:午前10:00~12:00
試験内容:和訳 3問、中訳 1問、中文の要約 1問

※①~③各試験の試験時間・試験内容は2022年6月現在の情報です。

 

①は和訳が4問出題されるため、括弧書きにも書いたように、普段日本語を話す方を想定しての試験です。②はその逆で、普段中国語を話す方を想定した試験となります。

③は①に近い内容ですが、中訳が1問割り当てられているため、日本語・中国語どちらでもという方を想定した試験になります。また③のみ試験時間が2時間となっています。

 

各試験とも翻訳問題があるのは当然ですが、文章の要約問題も出題されます。つまり、単に文章を訳すだけではなく、文章力そのものも求められるわけです。

 

受験後、自分がどのグレードにいるかが示されます。

グレード(1級~5級)とレベル内容と合格率

翻訳検定 中国語②

中国語翻訳能力検定試験の結果、自分が1級から5級のどのグレードに位置しているかが分かります。JTAのウェブページより、各級のレベル内容は以下のようになっています。

<グレード>     <レベル内容>

1級   ・・・プロと認める十分な翻訳能力を有する
2級   ・・・若干の修正を要するが、プロレベルの翻訳力に達している
3級   ・・・基本的には翻訳の素養がある、という程度
4級   ・・・中文和訳レベルから脱する必要がある
5級   ・・・日本語力、もしくは中国語力自体を見直す必要がある

 

レベル内容を見ると5級は、「日本語力、もしくは中国語力自体を見直す必要がある」レベルです。

これはもう、翻訳力うんぬんというより、基礎的な国語力自体が不足しているということなので、翻訳者を目指すのであれば、まずは基礎的な国語力を伸ばすところから始めなけばなりません。

 

その上の4級は、「直訳レベルから抜け出す必要がある」レベルですし、3級であっても「基本的には素質があると思うんだけどね・・・」といったレベルになります。

 

つまり、3級以下は翻訳の基礎から基礎以下のレベルとなるので、プロの翻訳者としてやっていくためには2級以上を目指す必要があります。

 

レベルの内容は以上の通りですが、では合格率はどうなっているのでしょうか?

これは皆さんもお分かりかもしれませんが、中国語翻訳能力検定試験は翻訳者としてのグレードを測る試験であるので、不合格者はおらず、従って合格率という指標はありません。

 

以上、中国語翻訳能力検定試験についてご説明してきましたが、この試験には翻訳者としてのグレードを測る、という目的の他に、「JTA公認翻訳専門職資格試験 中国語部門」の試験科目という役割も担っています。

 

つまり、中国語翻訳能力検定試験2級以上の取得は、次なるステップへの条件となります。ですので、今回は2つの試験を同時に紹介させてもらっています。

 

では、これより先は「JTA公認翻訳専門職資格試験」について見ていくことにします。

JTA公認翻訳専門職資格試験とは?

JTA公認翻訳専門職資格試験は年に4回(3月、6月、9月、12月)に実施され、英語と中国語の2つの部門どちらかを選択します。試験場所は中国語翻訳能力検定試験と同様にインターネットによる在宅試験となります。

 

本試験合格後に2次審査(翻訳経験2年以上の実績審査)を経て「JTA公認翻訳専門職(Certified Professional Translator)」と認定されます。

 

JTA公認翻訳専門職資格試験は単に翻訳スキルを問われるだけでなく、以下の5つの能力を問われる試験内容となっています。

 

  • 言語能力と翻訳表現
  • 文化背景知識と異文化理解力
  • 専門知識と実務能力
  • IT運用力とサーチ力
  • マネジメント能力と職業倫理

 

JTA公認翻訳専門職資格試験は試験の複雑さや、難易度の高さ、また実務経験が必要となるため、取得にはかなりの労力が必要となります。ですが、その分信頼性が高い資格と言えます。

 

JTA公認翻訳専門職資格試験の試験科目

JTA公認翻訳専門職資格試験中国語部門の試験科目は以下のようになります。

1)翻訳文法技能試験
-1:中日翻訳文法技能試験 10:00~11:00
-2:中日翻訳文法技能試験 11:00~12:10
2) 翻訳IT技能試験 12:30~13:30
3)翻訳マネジメント技能試験 13:45~14:15
4)翻訳専門技能試験(中国語翻訳能力検定試験の1分野)

 

これらは全て一度に受験しなければいけないわけではありません(そもそも中国語翻訳能力検定試験は別日での開催です)。1科目ごと順々に受験することも可能です。

 

しかし気を付けなければいけないのは、各科目合格の有効期限は5年となっているということです。はじめの科目を合格(=2級以上を取得)してから5年以内に他の科目も合格しなければ、それまでの合格は無効になってしまうので注意しましょう。

 

上記の科目全てに合格した後には、さらに翻訳経験2年以上の実績審査という2次審査が待っています。この2次審査を経て、晴れて「JTA公認翻訳専門職(Certified Professional Translator)」の認定を受けることができます。

JTA公認翻訳専門職資格試験の難易度と合格率

翻訳検定 中国語②

JTAのウェブページでは受験者数や合格者数などを公表していないため、実際の合格率は分かりません。

また、この試験の体験記やコメントもほとんど見られないため、どのくらいの難易度なのかを正確に知ることはできません。

 

ただ、一度の試験で「JTA公認翻訳専門職(Certified Professional Translator)」認定者が一人出るどうかなので、かなり難易度の高い試験であることは間違いありません。

 

まとめ

翻訳検定 中国語①

 

今回は「中国語翻訳能力検定試験」を経ての「JTA公認翻訳専門職資格試験」を紹介させていただきました。

 

翻訳に関しての国家資格というものは存在しませんので、「この資格を取得していなければプロの翻訳家になれない」ということはありません。

しかし、仕事を取るということになれば、民間資格ではあれ、資格があることで優位に立てることもあります。

 

JTA公認翻訳専門職資格試験は問題の専門性も高く、幅広い能力を要求されるので、初心者が簡単に合格できる試験ではありません。たとえ経験者といえども、一朝一夕の勉強ではどうにもならないでしょう。

 

基礎的、専門的両方の分野で、コツコツと勉強し、知識を積み上げていくほかありません。

加えて、2年間の実務経験が審査されるため、JTA公認翻訳専門職資格試験は、初心者の資格ではなく、実務経験を積んだプロ用の試験と言えます。

 

「JTA公認翻訳専門職」の認定を取得するのは、長く困難な道のりではありますが、この難関試験に合格すれば、その翻訳者に対する企業の信頼度は飛躍的に上がり、受注量も増えたりと、それ相応の対価を得ることができます。

挑戦したいという方は、この記事を参考にしていただき、ぜひチャレンジしてみてください!