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通関士って国家資格なの?年収は??難易度や合格率を教えて!!

私たち生活は自動車や牛肉などの食料、医薬品、衣類などたくさんの品物で支えられています。これらの品物は海外からの輸入品であることが多いです。また日本から輸出した品物が海外の多くの地域で活躍しています。こういった品物の輸出入の際、品物の詳細を税関に申請をしなければなりません。申請や申請のための書類の作成など通関の手続きで活躍するのが通関士なのです。
(※通関‥税関に品物の数量や金額、輸出先を税関に申告して許可をもらうこと。)

ではその通関士になるにはどのような試験を受けたら良いのか、年収はどれくらいなのか。興味を持つとこのような疑問が出てきますよね。
この記事では

  • 通関士ってどんな仕事?
  • 通関士になるには?
  • どんな試験内容?
  • 難易度や合格率は?
  • 通関士の年収はいくらぐらい?

といったことを解説していきます。
ぜひこの記事を読んで通関士への理解を深めていってください。

通関士ってどんな仕事?

冒頭でも記述しましたように通関士とは通関に関わる業務をする人です。主に以下の業務を行っています。

  • 統計品目番号(HSコード)に基づく貨物の分類
  • 税率の決定
  • 通関書類の作成
  • 不服申し立て
  • 税関に対する主張や陳述

細かく分類すると上記のような業務内容になります。

資格のエキスパート
資格のエキスパート
大まかに言えば他社から依頼された品物を輸出入する際に税関という役所に許可をもらう仕事をしています。

通関士の歴史

通関士という資格が誕生したのは1967年(昭和42年)になります。比較的新しい資格ですね。
1853年にペリーが浦賀に来航して運上所(のちの税関)が設置されることになりました。日本の貿易の始まりですね。日本のグローバル化が進み他国との貿易はどんどん活発になっていきます。そして1872年に全国の運上所が税関という名前に統一されます。しかし1939年に第二次世界大戦が始まり日本は敗戦国となりました。日本国憲法制定のきっかけです。現在ある多くの国家資格は日本国憲法制定後に誕生していますが国家資格のひとつである通関士が認められるのはまだ先の話になります。

日本が敗戦国から立ち上がり世界から貿易相手国として認められるようになります。税関の仕事も本格的になり通関業法というものも制定され、同時に誕生したのが通関士の資格というわけなのです。

通関士は国家資格であり、貿易に関連した国家資格は通関士しかないため貿易関連のスペシャリストと言えます。日本の企業が外国の企業と安全な貿易取引を行うために無くてはならない存在なのです。2017年の法の改正によって一部の会社では在宅ワークも認められるようになりました。家事と仕事を両立させたい人たちからも人気が高まっている職業です。

通関士になるためにはどうしたらいいの?

貿易には欠かせない存在の通関士。ではいったいどのような手順を踏めば通関士になれるのでしょうか。

  1. 通関士試験に合格する
  2. 通関業者に就職する
  3. 業者の申請により税関長の確認を得る

上記のような手順を踏むことで通関士になることができます。

ではそれぞれの内容について説明していきましょう。

①通関士試験に合格する

まず国家試験である通関士試験に合格しなければなりません。通関士試験は年に1回行われ年齢や学歴、職歴といった制限はありません。合格率は年度によって異なりますがだいたい約10%と言われています。合格率の低さからしてとても難関な試験ですね。

受験者数は年々増加しております。なぜかというと日本経済のグローバル化が進み品物の輸出入と貿易機会も増え、より多くの通関士が求められているからです。受験者数の増加とともに通関士試験の対策を取り入れている予備校や通信講座も増加傾向にあるため通関士を目指す方は受験対策に利用するのもいいかもしれませんね。

合格後の働き方は通関業者に就職するか、通関業務部門のある一般企業に就職して働くかで大きく変わってきます。

②通関業者に就職する

基本的には通関業務のみを行います。内容としては輸出入にかかわる書類の作成や輸送の予約、運送手続きです。通関士を目指す方にとって王道な進路であり、正式に「通関士」として名乗ることができます。

通関業者とは財務大臣の許可を得て通関業務を行う者のこと。輸入代行とは別。輸入代行は無資格でもできる一方、通関業者は通関業法の基準をクリアして行っている。

一般企業に就職して働く場合は?

通関業務部門のある一般企業として物流、貿易、航空会社といったものがあげられますがそういった会社は自社で輸出入関連の書類作成や事務作業を行っていることが多いです。

資格のエキスパート
資格のエキスパート
通関・貿易部門に配属されれば通関業務に携わることはできますが正式に「通関士」として名乗ることはできません。

通関・貿易部門がない場合でも通関担当者として依頼者の的確な説明、通関業者への正確な依頼ができるものとしてメリットがあり重宝されます。また貿易の税に関するアドバイザーとして税務事務所や税に関するコンサルティング会社から求められるケースも少なくないのです。

③業者の申請により税関長の確認を得る

2つ目の項目にある「一般企業で働いた場合」。ここに正式に通関士として名乗ることはできないとありますがどうしたら通関士として働くことができるのでしょうか。

通関士として働くには就職先の業者の申請によって税関長の確認を得る必要があります。就職先の業者が通関士確認届従業員等の異動届を税関に提出し、登録されてから業務に取り組めることができるということです。

資格のエキスパート
資格のエキスパート
資格取得と通関業者への就職はどちらからでも問題はなく、試験時の科目免除を利用するために先に就職して知識と実務経験を得てから資格試験に挑む人も多いようです。

科目免除についてはまた試験の内容で説明していきます。

通関士試験の内容


税関(財務省)7月に試験詳細を公表し、毎年10月上旬に実施されています。受験願書の配布期間は7月上旬から8月上旬であり受付期間は7月下旬から8月上旬の約2週間です。(2022年6月現在)
通関士試験の詳細は以下のようになります。

  • 合格基準:各科目の60%以上
  • 受験費用:3000円(インターネット出願の場合2900円)
  • 試験会場:全国13か所(北海道、新潟、東京、宮城、神奈川、静県、愛知、大阪、兵庫、広
  • 島、福岡、熊本、沖縄

基本的に受験願書の提出先である各地の税関に対応した実施地で受験します。

資格を取りたい人
資格を取りたい人
国家資格の受験費用は5000円を超えるものが比較的多いのですが通関士は3000円と安く感じますね。

受験資格はなくどなたでも受けることができます。試験内容は以下の3科目で構成されています。

内容 配点
通関業法 通関業者や通関士に関して規制する法律 45点
関税法等 関税法、関税定率法に加え外国為替及び外国貿易法など 60点
通関実務 関税・消費税等の計算実務、輸出入申告書の作成 45点

マークシート方式であり、各科目ごとに択一式と選択式がありますが通関実務のみ加えて計算式も出題されます。

  • 択一式→該当するものをひとつだけ選ぶ。該当する解答がない場合は0を選択する選択式
  • 選択式→15個の選択式の中から該当するもの5つを選ぶ語群選択式と該当するものすべてを選ぶ複数選択式の2パターン
  • 計算式→電卓を使用して関税額等もしくは課税価格を計算する

〈科目免除〉
通関業務に従事した期間が5年以上 →1科目(通関実務)免除
通関業務に従事した期間が15年以上 →2科目(通関実務・関税法等)免除

難易度や合格率は?

他の国家資格と比べての難易度や合格率も気になりますよね。まず近年の受験者数や合格率を以下の表にまとめてみました。

受験者数(人) 合格者数(人) 合格率(%)
第53回(2019年) 6388 878 13.7
第54回(2020年) 6745 1140 16.9
第55回(2021年) 6961 1097 15.8

※税関HPの通関士試験の結果を参考にし表を作成しております。

表を見ると年々受験者数は増加傾向にあり、合格率は幅はあるもののおおむね10%~20%といったところでしょう。しかしこの数値だけではどの程度の難易度かわかりづらいですよね。では他の国家資格に比べての難易度はどうでしょうか。

超難関 医師、司法書士、税理士、不動産鑑定士など
難関 獣医師、歯科医師、一級建築士、全国案内通訳士など
普通 通関士、保育士、測量士、宅建など
簡単 歯科衛生士、ITパスポート、理学療法士、美容士など

表から国家資格の中では普通の難易度であることがわかると思います。

資格のエキスパート
資格のエキスパート
受験資格の制限がないため勉強量や経験の有無関係なく、どなたでも受けれるという背景が合格率を下げている可能性もあります。

通関士試験に必要な勉強時間は約400時間といわれています。1日約2~2.5時間勉強したとして半年くらいで達成できる数字ですね。もちろん経験や知識の有無で勉強時間の量は変わってくると思いますが年に1回しか合格のチャンスがないため通関士を目指す方は計画的に勉強しましょう。通信講座や予備校の利用もいいかもしれませんね。

通関士の年収

通関士の平均年収は540万程度月々約38万程度です。これはあくまで平均年収であり勤務先やスキルによって500~1200万円と差があります。通関士は資格が必要な職業であり、通関業務に従事する場合資格手当の支給があるケースが多くなっています。

〈勤務先による差〉
国内の貿易・物流企業→平均400~500万円
外資系企業・海外勤務→平均600~800万円
※海外赴任手当、家族手当、危険手当などの支給があるため国内企業勤務の通関士より年収が高くなる

通関士の給料は年功序列であることが多く勤続年数に比例して上がる傾向にあります。資格手当というものもあり、勤務先や年数によって変動はありますが相場は5000~15000円くらいです。

資格を取りたい人
資格を取りたい人
資格取得が年収アップにつながる場合があるということですね。

また勤続年数が長くなると重要な役職に就くこともあるでしょう。その場合は役職手当というものがつきます。

勤続年数や世代に差はあれど男女の収入に差はありません。しかし女性の場合は妊娠出産による産休育休などで年収が男性に比べて低くなる傾向にありますがその半面そういった長期の休みで離れても復帰しやすい職場といわれています。

通関士に向いている人

通関士の仕事に興味があるものの自分が向いているか気になる方もいるでしょう。貿易関係の仕事就いていない人は自分に適正があるかどうかの判断は難しいかと思います。そこで通関士に向いている人の特徴を以下にまとめてみました。

  1. 書類作成などの細かい事務作業、デスクワークが苦にならない
  2. 責任感、集中力がある
  3. コミュニケーション力、交渉能力がある

上記の内容についてそれぞれ説明していきますので参考にしてみてください。

①書類作成などの細かい事務作業、デスクワークが苦にならない

通関士の仕事は書類の作成、審査、申告が主な業務になります。昨今では通関申告はオンラインでもできるようになってきたので基本的にデスクワークがメインとなります。しかし決して簡単なデスクワークではなくひとつでもミスがあれば物流が止まってしまう可能性もあるとても重要な仕事です。
こういった細かい事務作業やデスクワークが苦にならず、やりがいを感じる人には向いているといえるでしょう。

②責任感、集中力がある

通関士の仕事は小さなミスでも物流に影響を及ぼし、依頼主に迷惑をかけてしまうこともあり大きな責任を伴う業務です。さらにミスが重なるとペナルティを科せられ通関業者は営業停止などの大きな損失を生むことになりかねます。そのため常日頃から集中力をもって仕事に専念することができ、責任感が強い人が求められます。

③コミュニケーション力、交渉能力がある

審査が仕事である通関士はさまざまな人と接します。依頼主から輸出入する物品の情報を収集したり、税関にその情報を説明したり情報を正確に聞き伝える能力が必要となってきます。また依頼主の代わりに輸送会社に必要事項の確認をすることもあります。
このように通関士は情報を聞き出し、正確に伝え、時には税関に不服を申し立てるといった交渉もすることもあるのでコミュニケーション力に長けている人ほど適正があるといえるでしょう。

これらの項目に当てはまらないと通関士の仕事はできないのか、というと決してそうではありません。

資格のエキスパート
資格のエキスパート
例えば細かい事務作業が苦手な人でも苦手だからこそ意識を人一倍向けてミスなく仕事できる人もいますし、苦手な作業があっても依頼主からの感謝が嬉しくて仕事を続けられる人もいます。

すべての職業に言えることかもしれませんが「向いていないと思ったけど実際にやってみたらイメージと違った」ということも全然ありうるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

通関士は資格取得が必須の職業です。通関業者は1つの営業所につき1人通関士を雇わなければいけないため資格取得後の就職にまず困ることはないでしょう。資格の保有が給料アップにつながる場合もありメリットが高い資格といえます。また通関業者の以外のさまざまな業界で需要がある職業です。

貿易に関する国家資格は通関士のみです。資格の取得が新たなキャリアを広げるきっかけに繋がることもあるでしょう。
国際的な仕事に興味のある人や就職転職に有利な資格を取りたい人さまざまな人に通関士はおすすめの資格といえます。