システム監査技術者の資格は、IT業界でも最難関の資格として位置付けられています。
情報化社会が進むにつれ、企業としてはシステムのトラブルによる損害は何としても避けたいところです。
システム監査技術者は第三者の視点でシステムを評価し、リスクを回避できるよう助言を行います。
需要が高まる中、資格に合格できればキャリアアップは大いに期待できるでしょう。
ここでは、システム監査技術者の資格について、資格取得のメリットや試験内容、合格基準、効果的な勉強方法までお伝えしていきます。
Contents
システム監査技術者とは?

システム監査技術者とは、経営方針に対してシステムが正しく機能しているか、リスクとコントロールの面から評価・改善を行うITのコンサルティング業です。
具体的な仕事内容は、第三者の視点から企業が所有するシステムを評価することです。
評価の際は、安全性・信頼性・効率性の3つの視点から行います。
主に以下のような点に注意します。
- 法令に違反していないか?
- 目的に相応しいものとなっているか?
- 運用ルールに沿って正しく使われているか?
- トラブルのリスクはないか?
- 不正アクセスからの保護はされているか?
評価を行い、もし不具合や改善点が見つかった場合は改善策を提案します。
システムのトラブルを未然に防ぐことは企業にとっても重要事項です。
そのため積極的に監査を依頼する企業が多くなっています。
大手企業では、自社内でシステム監査部門を設置しているところがあります。
- 旭化成
- 資生堂
- 日産
- TUTAYA
- SBIホールディングス
- 銀行などの金融系
- システム監査技術者は第三者の視点からシステムのリスクを洗い出します。
顧客情報の流出などは最も避けねばならないシステムトラブルですから、内部であっても第三者の視点で評価・点検を行います。
システム監査技術者は、エンジニアが作った情報システムに助言を行う仕事となるため、相当に高い専門的知識と確かなスキルが必要です。
企業の求める経営の目的を理解し、マーケティングの面からも判断することが大切となります。
システム監査技術者は必ずしも資格が必要な仕事ではありませんが、資格を取得しておくと転職に有利です。
ここではシステム監査技術者の資格についてご紹介していきます。
システム監査技術者の資格ってどんなもの?

システム監査技術者の資格は、経済産業省が認定する国家資格です。
独立行政法人「情報処理推進機構(IPA)」が運営しています。
システム監査技術者の試験は、「情報処理技術者試験」の一部となっており、その難易度はスキルレベル4に相当する最難関試験です。
スキルレベルとは、「情報処理技術者試験」に含まれる試験区分を難易度別に表した指標のことです。
- スキルレベル1:ITパスポート試験
- スキルレベル2:基本情報技術者試験
- スキルレベル3:応用情報技術者試験
- スキルレベル4:高度情報処理技術者試験
情報処理技術者試験の中でも最高レベルに位置付けられていることがわかります。
合格すれば、システム監査人としての知識の証明と、情報システムの責任者となれる能力を証明することができます。
IT業界でも知名度が高い資格で、取得できれば就職に有利となるのは間違いありません。


システム監査技術者は履歴書に書ける?

システム監査技術者の資格は、高度情報処理技術者試験に含まれる最難関試験です。
合格して履歴書に記載することができれば就職や転職で有利となります。
履歴書に書く際は正式名称で次のように記載しましょう。
「◯年◯月◯日 システム監査技術者試験 合格」
システム監査技術者の資格は、主に次のような職種で有利となります。
- 監査法人
- コンサルティングファーム
- 企業の管理担当やセキュリティ担当部署
- 情報系を扱う公務員(自衛官、警察、海上保安庁、各省庁)
コンサルティング業や管理部門が主となりますが、意外なところで公務員に転職できる例もあります。
簡単に取得できる資格ではありませんが、仕事の幅は確実に広がります。
システム監査技術者の資格メリット

システム監査技術者の資格は、合格すれば次のようなメリットが得られます。
- 職場での給与アップ
- マネージャー職などのキャリアアップ
- 転職の幅が広がる
現在の仕事でのキャリアアップや転職、給与のアップも期待できます。
さらにシステム監査技術者の資格を取得すると、他の資格試験で一部有利になる場合があります。
試験名 | 有利になる事柄 |
弁護士試験 | 論文式筆記試験選択科目である理工V(情報)が免除 |
技術士試験 | 第一次試験の専門科目である情報工学部門が免除 |
中小企業診断士試験 | 第一次試験科目の一部が免除 |
システム監査技術者の資格は、ITの最難関試験であるがゆえ、そのメリットも大きくなるのです。
システム監査技術者の合格率

システム監査技術者の合格率はわずか15%ほどです。
国家資格は平均して20%を超える合格率となっていますので、システム監査技術者の難易度の高さがお分かりいただけると思います。
年度別の合格率はこちらです。
開催年度 | 受験者数(名) | 合格者数(名) | 合格率(%) |
2017年度 | 2,862 | 433 | 15.1 |
2018年度 | 2,841 | 408 | 14.4 |
2019年度 | 2,879 | 421 | 14.6 |
2020年度 | 1,702 | 260 | 15.3 |
2021年度 | 1,877 | 301 | 16.0 |
受験者の平均年齢は40歳を超えていることから、十分な知識とシステム監査の経験値も武器になることが伺えます。
入念な準備をして試験に挑むことが大切です。
システム監査技術者の試験形式

システム監査技術者の試験は、ペーパー式で1日の中で午前Ⅰ午前Ⅱ、午後Ⅰ午後Ⅱに分かれています。
問題の形式にも違いがあり、午前Ⅰ午前Ⅱは選択式(4択)、午後Ⅰ午後Ⅱは記述式です。
試験時間と問題数などをまとめた詳細はこちらです。
試験時間 | 出題形式 | 問題数 | |
午前Ⅰ | 9:30〜10:20(50分) | 選択式(4択) | 30問 |
午前Ⅱ | 10:50〜11:30(40分) | 選択式(4択) | 25問 |
午後Ⅰ | 12:30〜14:00(90分) | 記述式 | 3問中2問を選択して回答 |
午後Ⅱ | 14:30〜16:30(120分) | 論述式 | 2問中1問を選択して回答 |
システム監査技術者の試験では、この4つの区分で内容も形式も違うことを覚えておきましょう。
区分別の試験内容と合格基準

システム監査技術者の試験は、午前Ⅰ・午前Ⅱ、午後Ⅰ・午後Ⅱに分かれているとお伝えしました。
ここでは区分別による試験内容の違いと合格基準をお伝えしていきます。
午前Ⅰの試験範囲と合格基準
午前Ⅰの試験では、選択式(4択)で幅広いIT関連の基礎知識が問われます。
以下の3つの分野から出題されます。
- テクノロジ系(17問):応用数学、情報・基礎理論、プログラミング、アルゴリズム、コンピュータやシステムの構成要素など
- ストラジ系(8問):経営・技術戦略マネジメント、経営組織論、システム戦略など
- マネジメント系(5問):サービス・プロジェクトマネジメント、システム監査
午前Ⅰの試験は、同日に行われる「応用情報技術者試験」の午前問題と酷似した30問が出題されます。
午前Ⅰの合格基準は、100点満点中60点以上です。
午前Ⅱの試験範囲と合格基準
午前Ⅱは午前Ⅰの範囲から内容を絞ったより高度な問題が出題されます。
選択式(4択)で出題範囲は以下の9分野です。
- データベース
- ネットワーク
- セキュリティ
- システム開発技術
- サービスマネジメント
- システム監査
- 経営戦略マネジメント
- 企業活動
- 法務
出題の主な傾向は、システム監査問題が10問、法務問題が3問、セキュリティ問題が3問となっています。
システム管理や監査の基準など、より専門的な難しい内容です。
午後Ⅱの合格基準は、100点満点中60点以上となります。
午後Ⅰと午後Ⅱの試験範囲と合格基準
午後Ⅰと午後Ⅱの試験は、出題範囲は以下同様です。
- 情報システム通信ネットワーク
- システム監査の実践
- システム監査人の行動規範
- システム監査・情報セキュリティ関連法規
試験範囲を踏まえた上で、それぞれの出題形式と合格基準は以下となります。
午後Ⅰ
午後Ⅰの試験は記述式となり、システム監査やセキュリティの基本的な知識から応用を問う問題が出されます。
3問のうち、2問を選択して回答します。1問につき5つほど設問があり、決められた文字数(25文字以内、40文字以内など)で回答します。
午後Ⅰの合格基準は100点満点中60点以上です。
午後Ⅱ
午後Ⅱはリスク・コントロール・監査手続きの3つを論述式で答える問題です。
2問のうち1問を選択して論述します。問題は論述のテーマとなります。
午後Ⅱの合格基準には評価ランクがあり、A〜Dに分かれている中で一番高い評価のAのみが合格となります。
システム監査技術者の勉強方法と勉強時間は?独学は可能?

システム監査技術者の資格は、独学で勉強する人がほとんどです。
勉強方法と勉強時間は受験者のレベルによってさまざまですので、独自のスケジュールを立ててモチベーションを維持していきましょう。
目安としては勉強時間でみると、1日2時間、土日で4時間程度勉強する場合、上級者で2〜3ヶ月、中級者で3〜5ヶ月となります。
難易度の高さから初心者が挑戦できる資格ではありません。
勉強方法は、4つの区分別にご紹介していきます。
午前Ⅰの勉強方法
午前Ⅰは選択式(4択)でシステム監査の基礎知識から幅広く出題されます。
過去問を繰り返し解き、ほぼ丸暗記することがポイントです。
これまでの問題の傾向として、重要な用語は過去問と似通って出題されます。
慣れてきたら試験時間を意識して確実にわかる問題から解き、点数を確保していく練習を行います。
午前Ⅱや午後Ⅰ・Ⅱの方が難易度が上がりますので、そちらに勉強時間を割きましょう。
午前Ⅱの勉強方法
午前Ⅱも午前Ⅰと同様選択式(4択)ですが、より専門的な内容で難易度が上がります。
基本的には過去問を繰り返し解く勉強法になります。
しかしシステム監査以外のことも多く出題されるのが特徴となっているため、ここでは参考書もプラスして取り入れると効率よく学習できます。
おすすめはこちらです。

2021年度版 ALL IN ONE パーフェクトマスター システム監査技術者
3,960円(税込)
この参考書であれば午前Ⅱの対策がしっかり盛り込まれています。
午後の記述式・論述式もわかりやすく解説されている点がおすすめです。
午後Ⅰの勉強方法
午後Ⅰの試験は記述式となるため、伝えたいことをまとめる文章力とシステム監査の理解度が重要となります。
問題の傾向は過去問を見てしっかり掴んでおきましょう。
システム監査の考え方は基本的なことを押さえておくことが重要です。
- システム監査とは?
- リスクとは何か?
- コントロールとは?
- ITガバナンスとは?
この辺りを説明できるようにしておきましょう。
また企業の運営に関しての知識も問われます。
午後Ⅰと午後Ⅱの試験におすすめの参考書はこちらです。

情報処理教科書 システム監査技術者 2021~2022年版 (EXAMPRESS)
4,268円(税込) 512ページ
こちらの参考書では、午後Ⅰ・Ⅱの試験を重点的に解説しています。
平成23年〜31年の問題がすべて網羅されていますので、回答のポイントを得ることができます。
午後Ⅱの勉強方法
午後Ⅱの試験では、時間内で規定文字数を書く論文対策が必要となります。
システム監査基準とシステム管理基準の理解は必須です。
さまざまな事例について、リスクとコントロール、監査の手続き方法など、検討できる材料を書き出しておきましょう。
設問に「あなたが担当した監査について」とあったら、実務経験がなくとも監査人として答えるようにしましょう。
午後Ⅱの対策に関しては、過去を解くことよりも知見を広げ、文章で表現する練習を行います。
午後Ⅰで紹介した参考書も合わせて活用してください。
申し込みから受験料、合格発表まで

システム監査技術者の試験は年1回、毎年4月に行われています。
申し込み期間は1月上旬〜2月中旬です。
申し込みの手順は以下となります。
- 情報処理推進機構(IPA)のページから申し込みフォームへ
- 必要事項を記入し、申し込み
- 受験料の支払い(クレジットカード、ペイジー、コンビニ払い可)
- 受験票が届く
受験料は一律5,700円(税込)です。
合格発表は6月下旬頃、情報処理推進機構のサイトにて受験番号とパスワードを入力して確認できます。
郵送による通知はありません。合格者は官報にも公示されます。
まとめ
IT業界の最難関として位置付けられる国家資格「システム監査技術者」についてお伝えしてきました。
- システム監査技術者の仕事内容
- システム監査技術者の資格とは?
- 資格のメリット
- 履歴書の書き方
- 合格率
- 試験内容と合格基準
- 勉強方法と勉強時間
システム監査技術者の資格を取得できれば、就職や転職で一目置かれる存在になります。
将来のキャリアアップに大きく貢献できることから、ぜひ挑戦することをおすすめします。